沢山の感情が綯い交ぜになって。
泣いているんだか、笑っているんだか判らない。切なそうにしているのか、物欲しそうにしているのか、嬉しそうにしているのか、はたまた愛しそうにしているのか。
全てが正しいから、全てが私の中で一緒になっているから、自分がどんな顔をしているのか判らない。
表現なんて、とてもではないけれどすることができない。
私は今どんな顔をしているんだろう。
あまりの貪欲さと浅ましさが、罪悪感を誘って私を苛む。
想う毎に欲深く、想う事に欲深み、
想いに託けた欲だけが一人で走り出す。
何かが狂ってきている。それは重々承知している。
承知したところで何が変わるだろうか。
想うから欲しい、そんな言い分はもう既に只の言い訳でしかない。
本来等しく分かち合うべき欲が、あなたとの欲があなたへの欲へ、
あなたへの欲が我欲となって私はあなたを見失おうとしている。
愛しているという言葉が痛いのは、本当に猜疑心からであるのだろうか。
誰よりも猜疑的だと言うあなたはきっと、私があなたを欲しがれば喜ぶだろう。
あなたが欲しいと泣けば私を愛しく思うだろう。
表情を崩さない私に、苛々していたんだろう。
私を疑い羨み、信じられずに歪んで、突き放しながら利己的に愛している。
私はいつまで隠していられるだろうか。いつまで平静を装っていられるだろうか。
初めて感情を剥き出しにした私を前に、あなたは未だ嘗て見たことの無い程の慈愛の心を露に私を抱き締めた。
あなたは満たされ、優越を感じ、あなたなしでは居られない私をどうしようもなく愛しく思った。
求められる事であなたは私を愛する。
歪んだあなたの愛し方に、乗らないようにと冷静を装う、他人の色へといとも簡単に染められる私は、
抵抗虚しく愛欲しさに、欲を深め、あなたを愛し、盲目となりつつある。
ほしいと、くださいと、口を衝いて出そうな言葉を事あるごとに飲み込んで。
私が無様に、惨めに、浅ましくあなたを欲しがる程、あなたは喜んで私を慈しむから。
愛欲しさに自尊を棄てそうになっているいる己を叱咤しているのに、
歪んだ愛し方に不平を言うより先に、私は流されようとしている。
私は私の欲深さを知っているから、だからこそあなたのような人に欲を持つまいとしていたのに。
あなたの歪んだ愛に溺れずに理性的にあるべく、あなたを不快に思わせる程表情を固めていたというのに。
一度与えられたあなたの愛がどうしようもなく欲しくて、
繕わず単純な欲を露わにする事が眩暈を覚える程快感で、
何より、愉悦に歪むあなたの表情が。
私は今どんな顔をしているだろう。
あなたを想いあなたを愛し、快感と苦痛の狭間で沢山の感情を伴いながら、私の部屋を後にする貴方の単調な「愛してる」に、顔の筋肉を不自然に引き上げながら、その背中を見送っている。