他人

メールひとつですら初めての相手にはあわせる。
授業中だろうとかえってくるならあわてて授業中にかえす。
絵文字と顔文字が多いひとなら慣れなくてもおなじようにつかう。

私は私でいい、と思えばいいのに、
変に思われるといやだからとりあえずそのひとのコピーをする。
メールアドレスなんて渡されてもどうすればいいかわからずに、
一度話題を投げられたら落ち着いた頃に慌てて新しい話題を投げ返す。
数時間返ってこなかったら数時間返さなくていい。

「私は私でいい」と思えたらいいのに、
全部真似してしまう、普通でいたい。
彼女たちがそうしているから私もそうでなければと必要以上に思ってしまう。
メールなんてみていればひとそれぞれで、まったく違うタイプであるのに、
文字をあわせていくたびに自分の基本的な文面がわからなくなってくる。
別にいいんだけど、
私がわからなくなるよね。

性格だってわかんない。
小さなことで大袈裟にむかついたふりをするのもわたしで、
ちょっとやそっとじゃ怒らずにこにこするのも私。
相手を警戒して虚栄心を漂わせて、すれ違う冷たい視線をにらむのも私で、
相手がどんな様子であろうと目が会えばにっこり笑って挨拶をするのも私。
全部私、
けど、場面によって違う。
一貫性にかけている。
どれかになりたいとも思わないけど、
でもどれも私なんだ、けどおかしい、誰かに気付かれてやいないだろうか。

いいこぶりっことかそんなんじゃない、そうであればまだましだ。
どれも本気でやっている。
そりゃあ「こうすればスムーズにいく」くらいは思っているけど、別にいい子に見られたいわけではない。
それに、虚栄心を漂わせて相手をにらむのは、「彼女ら」のマネだ。
そしてにこにこしているのは、スムーズにいろんなものを切り抜けていく「彼女」のマネだ。

私はどこだ。
まあ、別にいいんだけど、そんなの。
けど統一くらいはしたい。